社会人である市役所職員にとって、自己研鑽が大事なことは言うまでもありません。
その最たる例が資格の取得。
しかし、市役所職員が取得するとその後のキャリアを危うくする資格があるのです。
そこで今回は、なんとなく資格を取りたいけれど、何を選べばいいか迷っている人に向けて、軽い気持ちで取得すると後悔する資格を6つ紹介します。
資格そのものは「悪」ではない
まず大前提として、今回紹介する資格を取得すること自体は決して悪いことではありません。
むしろその分野で働きたい人にとっては強力な武器になります。
ただし、「なんとなく」や、「取得しやすそうだから」などの理由で取ると、希望しない部署への異動リスクや誤解を生み、結果として自分の首を絞めてしまうかもしれません。
1.精神保健福祉士

精神保健福祉士は精神障害・メンタルヘルスの相談支援に特化した資格です。
障害福祉関係の部署や生活困窮者自立支援窓口などに直結しやすい資格で、これらの部署へ異動を希望していない人にとっては異動リスクが大きくなります。
福祉関係の部署は人気がないため、人事からすると関連する資格を取得した人はありがたい存在です。
理事者への異動理由の説明も付けやすく、反対される理由がほぼありません。
一度この資格を取得したことを報告すると、その後も福祉のスペシャリストとして福祉関係の部署に回されるリスクもあります。
精神保健福祉士の資格を取得すべき人とは?
一方、福祉は市役所のメインと言って過言ではない仕事です。
地域住民の福祉増進を担える、やりがいのある仕事で、市役所を職場に選んだときの初心を思い出してみると、そのような仕事を希望して就職した方も多いはずです。
「困っている人を現場目線で助けたい」と考えている方にとって、この資格は強力な武器にもなりますし、実際に異動した後も「取っておいてよかった」と思える資格です。
2.介護福祉士

介護福祉士は介護現場の中核を担う国家資格です。
介護や高齢福祉関係の部署に直結しやすく、これらの部署を避けたい人にとってはリスクのある資格ですね。
高齢者人口が増えている現在、これらの部署の役割は大きく、業務量も増加傾向にあります。
特に介護予防の重要性が年々高まっていることから、即戦力となる資格持ちの職員は異動リストに載りやすくなります。
介護福祉士の資格を取得すべき人とは?
高齢者関係の部署と言っても業務内容は多岐にわたります。
制度に則って業務を行う介護保険や介護認定に関する仕事もあれば、介護予防という自由度の高い仕事もあります。
そのため、「高齢者関係の中でも、この仕事がしたい」と希望を通してもらうために資格を取得するのは効果的です。
また、高齢者関係の部署では、どんな業務内容でも現場の方との協力が不可欠です。
そのときに資格があることで現場の方からも一目置かれ、仕事がやりやすくなります。
3.社会福祉主事

社会福祉主事は、生活保護や独居老人を対象とするような、ケースワーカーに必須の資格です。
正直あまり人気のない「ケースワーカー」という職に就きたくない方にとっては、社会福祉主事の資格を取得するのはリスク以外の何物でもありません。

私のいた市役所では、「ケースワーカーを続けたくない」と社会福祉主事の資格を頑なに取得しないケースワーカーの職員もいました。
ケースワーカーは人の人生に深く踏み入る仕事で、責任が重い仕事です。
生半可な気持ちでは務まらないため、安易に社会福祉主事の資格を取ると後悔するかもしれません。
社会福祉主事の資格を取得すべき人とは?
ケースワーカー業務に就く職員に対して、業務の一環として社会福祉主事の資格取得を義務付けている自治体もあります。
それでも、「もともと生活保護・障害・子ども家庭などの分野に強い関心がある」人や、「ケースワーカーとしてバリバリやる覚悟がある」人は、アピールのために事前に取得するのはアリでしょう。
しかし、これらの部署は資格を持っていなくても、比較的異動希望が叶いやすいので、あえて自腹で取得する必要は薄い資格です。
4.防災士・危機管理士

防災士は認定NPO法人・日本防災士機構の民間資格、危機管理士は日本危機管理士機構が認定する資格です。
どちらも防災・減災の知識と技術を身につけた人への認定資格になります。
庁舎管理部署や防災関係の部署と親和性の高い資格で、緊急時の出勤を極力避けたい方にはリスクが高い資格になります。
特に防災関係は担当する業務によって「お酒が飲みにくい」「旅行などで遠出しにくい」という性質があります。
防災士・危機管理士の資格を取得すべき人とは?
これらの資格は、担当する部署によっては業務の一環として資格取得を義務付けられる自治体もあります。
また、防災に関する知識はどの部署にいても活用できますし、日常生活でも万一のときに大いに役立ちます。
「災害時に右往左往したくない」「災害時に役立つ職員になりたい」という方は積極的に取得していい資格だと思います。
5.行政書士

行政書士は、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類を代理で作成し手続きできる資格です。
行政書士が市役所で手続きを行うことも多いので、市役所職員にとっては身近な資格ですね。
ただし、高卒以上で市役所の行政事務を17年務めると試験なしで行政書士になることができるので、あえて取得する必要性は低いです。
また、法律初学者にとっては、仕事をしながら勉強を続けるにはハードルが高いことも課題になります。
それでも行政書士の資格を取ると、「市役所やめるの?」とあらぬ噂になるかもしれません。
行政書士の資格を取得すべき人とは?
近く行政書士として独立や転職を考えている方は、仕事と並行して勉強に励みましょう。
また、難関の行政書士の資格を取得できたということは、行政法や民法にも強いことの証拠となり、市役所内でのキャリアアップに役立つはずです。
かなり大変ではありますが、若い方が取得する資格としてはおすすめでもあります。

行政書士の友人の話を聞くと、独立して仕事を得るのは大変だそうです。
独立するなら、「自治体への入札参加資格の手続きを内部の人間として行っていた」など、自治体経験者の行政書士として強みを出せるといいですね。
6.宅地建物取引士(宅建)

宅地建物取引士は、不動産の売買・賃貸のときに重要事項の説明や契約書への記名押印を行う、宅建業者の取引を法的にサポートする資格です。
土地や家屋の固定資産税、都市計画、公共用地の取得など、不動産に関する部署で役立つ資格です。
しかし、行政書士ほどではないにせよ、宅地建物取引士の資格を取得するのは生半可な気持ちでは難しいのが実情です。
さらに資格取得が給与に反映されない自治体も多く、市役所職員として取得する資格としてはコスパが良くはありません。
また、宅地建物取引士の資格を取ると、「転職するの?」や「副業で不動産投資するつもり?」などと言われかねません。
宅地建物取引士の資格を取得すべき人とは?
とはいえ、本気で不動産投資を行う方、行いたい方にとっては強力な武器になります。
また、不動産業という「成果が出れば市役所の倍以上の給料がもらえる」仕事に転職もしやすくなります。
簡単ではないけれど、取得して損になる資格ではありませんし、自分のための資格として取得する価値は大いにあります。

市役所勤務時代の同僚の中には、不動産投資を始めてから宅建を取得した者もいます。
不動産投資は公務員でも認められる場合がある数少ない副業なので、本気で資産形成に取り組んでいくのも一つの選択肢ですね。
Q&A
- ここに挙げられている資格を持っていると、必ずその部署に配属されますか?
いいえ、「必ず」ではありません。
本記事で書いたのはあくまで傾向であり、「その資格を持っている人が少ない」「ちょうどその分野の人手が足りない」といった条件が重なると配属されやすくなる、という話です。
人事は「適性」「年次バランス」「家庭事情」なども踏まえて決まりますので、資格だけで決まるような単純なものではない、という点は押さえておいてください。
- すでにこの記事で挙げた資格を持っています。人事に伝えない方がいいですか?
すでに持っている資格も、これから取得する資格も、職場に報告する義務はありません。
ただ、基本的には「隠す/隠さない」というよりは、「その資格をどう活かしたいのか」「どんな分野でキャリアを伸ばしたいのか」を考えたうえで伝えるのが良いと思います。
- 資格を取っても、人事評価や昇任には全く関係ないのでしょうか?
これは自治体ごとにかなり差があります。
- 昇任試験の受験資格に一部の資格が組み込まれているところ
- 「自己啓発」の一環として、評価シートに加点されるところ
- ほぼノータッチで、面接時の話のネタになる程度のところ
など、実際はいろいろです。
この記事では「評価への直接の影響」よりも、「異動のしやすさ/されやすさ」「キャリアの選択肢が狭まるリスク」という観点で取り上げています。
評価への影響が気になる場合は、信頼できる先輩や人事担当に、雑談ベースで聞いてみるのも一つの手です。
- 逆に、市役所職員が取りやすくて“無難”な資格ってありますか?
たとえば、情報セキュリティマネジメント(SG)やMOS Excel Expertなどは、比較的取得しやすい上、どの部署でも役立つ資格です。
また、別の記事で「内部向けの部署に異動しやすくなるおすすめの資格」を紹介しているので参考にしてみてください。
まとめ:自身のキャリアを熟考したうえで資格を取得しよう
この記事では、精神保健福祉士、介護福祉士、社会福祉主事、防災士・危機管理士、行政書士、宅地建物取引士(宅建)といった、「市役所職員が安易に取得すると後悔しやすい資格」を紹介しました。
共通しているのは、これらの資格が「ある特定の部署や分野と結びつきが強い」、あるいは「転職・副業フラグ」と見られやすいという点です。
資格そのものは素晴らしいものですし、覚悟を持ってその分野に飛び込みたい人にとっては、間違いなく強力な武器になります。
一方で、「なんとなく格好いいから」、「自己啓発っぽいから」、「とりあえず何か資格を取得したい」といった理由だけで手を出してしまうと、希望していない部署への異動リスクが増えることになりかねません。
資格を選ぶときには、ぜひ次の3つを一度立ち止まって考えてみてください。
- 10〜20年後、どんな分野で仕事をしていたいか
- 自分にとって「絶対に避けたい部署」はどこか
- その資格を取る目的は「評価」「転職」「自己満足」のどれがメインか
そのうえで、「それでも時間とお金をかけてでも取りたい」と思える資格を選べば、資格をうまく使いこなす側に回れるはずです。
この記事が、あなたの市役所ライフと資格選びのヒントになることを願っています。
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